楽楽のパンとは

国産小麦のお話

   川越ベーカリー楽楽では、現在すべてのパンを北海道産小麦でつくっています。日本の米の自給率がほぼ100%なのに対して、小麦の自給率が14%。その内、パン用小麦の自給率はわずか1%。その希少な国産小麦粉をありがたく大切に、そして日本人の誇りを持ってパンにしています。焼けたパンを見ただけでは、外国産小麦か国産小麦かはわかりませんし、本来パンは外国産の小麦のほうがふくらみがよく、向いているのかもしれません。(価格だって、外国産小麦はずっと安価に手に入ります・・・)

それでも国産小麦の繊細な味わい、豊かな風味は格別です。そして、ポストハーベスト農薬の観点から見ても、安心・安全であることは言うまでもありません。だから、私たちは国産小麦にこだわって、「安心で小麦の味がするパン」をつくり続けています。

(是非、バゲット・バタール、食パン、フィセル、チャパタ、ヘルシートーストなど、シンプルなパンを食べてみてください。きっと小麦の味を実感していただけると思います。)

 

小麦粉には小麦生産者の熱い想いがいっぱいにこめられているんです。

 北海道は十勝「前田農産」の前田さんは、曽祖父が開墾した本別町の大地で、パン用の小麦粉の栽培を行っています。とにかく大変で採算のあわない仕事です。小麦の栽培が盛んな欧米とは全く異なる日本での小麦栽培には高価な設備も肥料も手間も半端なくかかります。また、丹精込めてつくっても、収穫前に病気でだめになってしまうことも少なくありません。気候が安定し、病気にかかりにくい欧米の小麦は、広大な土地で大量に収穫され、どんどん出荷されていきます。そしてとても安価です。

本来なら輸入小麦粉と比較して3~4倍するべき国産小麦も、市場の相場で考えれば価格は2倍が限度です。(だって、いくら国産小麦のパンでも一般的なパンの4倍じゃ、なかなか買えませんね)。だから、国からの補助金でやっと2倍を保っているのが現状なのです。

そんな大変で経営メリットのない小麦作りを、前田さんはなぜするのでしょうか?答えは「この良質で美味しい「笑顔の源になる小麦」を消費者に届けたいから」でした。アメリカまで勉強に行き、ひたむきに小麦の生産に取り組む前田さん。その志の高さに心動かされます。

パンを食べるとき、誰がつくったパンかを考えることがあっても、その小麦を誰がつくったのかを考えることがあったでしょうか。これほどの苦労を重ね、人生をかけて小麦をつくっている生産者がいるというのに。前田さんはこんなことも言っています。 「パンやお菓子の焼ける香りから、この本別町の小麦畑の風景がふんわりと浮かび、思わず笑顔になるような、そんな小麦づくりを目指したい」

川越ベーカリー楽楽のパンは、こうした想いがいっぱいにつまった小麦でつくられています。

    前田氏.JPG  2010年夏前田北海道本別町(十勝)の小麦畑にて 前田茂雄氏(右)と

              

私たちは、消費者の笑顔を北海道に住む小麦生産者に伝えることをひとつの使命とします。

 同じく十勝の音更町「庄司農場」の庄司さんは、楽楽店主が北海道に行くたびに、家に招いたり、飲みに連れて行ってくださいます。その庄司さんが2010年2月に川越ベーカリー楽楽を訪れました。

この訪問をきっかけに、私たちは、パンを食べてくださるお客様がすぐそばにいるということが、いかに幸せなことであるかを考えるようになりました。私たちはパン屋として、毎日お客さまに接しています。パンをつくる職人も工房から売り場の様子が手に取るようにわかりますし、美味しかったよ!の一言に元気付けられることが多くあります。しかし、小麦生産の現場にいる庄司さんはどうでしょう。苦労して小麦をつくりながら、その小麦がどんな人の手によってどんなパンになり、どうやって消費者の手に渡り、どんな反響があったのか、実感することはほとんどないのです。

だから、庄司さんは雪が深くて農作業ができない雪の季節になると、全国の国産小麦のパン屋を訪問して回ります。自分たちの小麦がどんなパンになり、どんな人たちがどんな思いでパンを食べているのかを感じるために。

お客様の笑顔はお店の財産。その笑顔を小麦生産者に伝えることで新たな笑顔が生まれる。そう気づかされた出来事でした。

パンの消費者と小麦の生産者をつなぐ存在になりたい!

 私たちベーカリーは、パンのつくり手として、小麦生産者と消費者の間に立つ存在です。生産者と消費者をつなぐことは、べーカリーにしかできません。

川越ベーカリー楽楽は、国産小麦パンの専門店として、消費者に小麦を感じていただけるパンをつくり、小麦に関わる様々な情報を提供することを標榜します。そして、お客様の笑顔や声を生産者にフィードバックしていきたいと思います。

お客様の笑顔と小麦の生産者の顔、そしてパンのつくり手がひとつにつながる。その実現に向けて、できることを少しずつ実行していくことをお約束します。

*その後2011年2月には前田農産の前田さんも楽楽を訪れました。そして、2011年6月には社員全員で十勝を訪問。前田さんと庄司さんの小麦畑に足を運び、生産者の熱い思いを実感しています。